「一眼レフかミラーレスのカメラを買おうと思うけれど、フルサイズってなに?」「なんだか他のセンサーと比べるとフルサイズが良さそう…でも初心者がプライベートで買って使いこなせるの?」
こんな疑問は多いはず。僕も初めてフルサイズのカメラを買ったときは悩みました。いくら調べても、センサーの違いや意味はわかっても「結局自分には合ってるの?」ということが良くわからなかったのです。
そこで今回、数年前にビクビクしながらニコンのフルサイズ機を手に取り、仕事でもプライベートでもまったく後悔なく使い続けている僕が、「フルサイズとは?」をお伝えします。
「フルサイズ機を持てばどんな体験ができるのか」も絡めて話を進めますので、この記事を最後まで読んでも「フルサイズ機いいな」と思えれば、もう悩む必要はありません。
ぜひそんな風にご覧下さい。
フルサイズとは、センサーサイズの種類の一つ。
そもそも「フルサイズ」とは、カメラの中にある「イメージセンサーのサイズ」の一つの種類。僕たち一般ユーザーが選びやすいセンサーサイズの中で、一番大きいサイズが「フルサイズ」というわけです。
ちなみに「フルサイズ・APS-C・フォーサーズ」の3種類があり、それぞれの大きさが上の図。カメラの脳みそともいえる部分であり、この違いが今後のあなたのカメラライフに大きな影響を与えます。
結論としては、一度でも「フルサイズにした方がいいかな…?」と悩んだ人が妥協してAPS-Cやフォーサーズを買ったところで「やっぱりフルサイズを買えばよかった」と120%後悔します。これは断言します。気合いれてフルサイズを選ぶべき。
なぜか?それをセンサーサイズの違いによる写真への影響から読み解きましょう。
センサーサイズが変われば、映せる範囲が変わる
センサーサイズの違いにより、写せる範囲が変わります。同じレンズを付けて撮影したと仮定した場合、上の図のようにフルサイズが一番広く、フォーサーズが一番狭く写ります。もちろんレンズを選べばある程度はカバーできますが、そこには物理的な限界が。
「フルサイズを買おうかな?」と悩む程カメラに惚れ込んでいる人の殆どは、きっと「星空」も映したいでしょう。ポートレートを撮影するときだって、ときには広い風景と共に写したいシーンも出てくるはず。
発売されているレンズラインナップ自体も、フルサイズが一番広角に有利なのは間違いない現実です。あなたが撮りたいあの風景は、APS-Cで映せますか?
センサーサイズにより、階調表現のクオリティが変わる
北海道・小樽の港町の、何でもないところで撮ったお気に入りの一枚。ニコンD750というフルサイズ機で撮影しています。なんだか青春の夏の前触れのような、例えば中学生の甘酸っぱい恋愛が始まりそうな港町の風景が撮れた気がして、お気に入りになりました。
これをもしスマホとか、もうちょっとセンサーサイズの小さいカメラで撮っていたら、お気に入りにならなかったと思うんです。なぜか。それはセンサーサイズが小さいと階調表現に限界があり、雲の形まで綺麗に表現できないから。
この写真、もし雲がいまいち写っていないただの真っ青や真っ白な空だったとしたら、味が出なかったはず。センサーサイズが小さければ明暗差の表現に限界があり、上手く写らなかったでしょう。
写真は「影」の表現が大切だとも言われます。明るいところと暗いところを、どう上手く表現していくか。そこにもセンサーサイズの力は必要になってくるということです。
センサーサイズが大きければ、写真を救える
札幌駅の有名な星時計。天気の良い日に撮影すると、どうしても逆光で暗く写ってしまいます。でも明るくすると、それはそれで一部が白飛びしてしまう。そんなシチュエーションで、暗く写った元写真と、補正で明るく調整した写真の2枚を並べてみました。バーを左右に動かしてご覧下さい。
センサーサイズが大きければ大きいほど、明るく補正したときの画質劣化をセーブできます。つまりセンサーの大きさに頼ったパワープレイな撮影が可能ということ。多少暗めに写したところで後の修正でいくらでも救えます。
わざとそうやって撮影する場合もありますし、ふいに「暗く写っちゃった…」というときにも救えます。初心者こそフルサイズ機を持てば、機材の力によって失敗写真を減らせるし、表現にも幅がでるということ。実はAPS-Cやフォーサーズこそ玄人向きでは?と思っています。
フルサイズを選べば体験できること
つまりセンサーサイズが大きければ大きいほど、あなたのカメラライフが広がります。フォーサーズ機から乗り換えた僕が、フルサイズ機を買ってどんな体験ができたか、そこをお伝えしたいと思います。
星空を綺麗に写せる
この写真、フルサイズ機に開放F2.8・焦点距離14mmのレンズをつけて、ISO6400まで引っ張って撮っています。
APS-Cのセンサーだと、ISO6400まで上げたら見れたもんじゃない写真が出来上がるはずです。でも星空を撮るには、できればこのくらいまで上げたい。
もしかするとウェブに掲載するくらいなら問題ない画質かもしれませんが、印刷するとなると顕著な違いがでてきます。せっかく出会えた星空。家族や友達との思い出の一瞬を切り取った一枚。
せっかくなら綺麗に写せた方が良いですよね。
空をダイナミックに写せる
フルサイズ機だと朝焼けだって綺麗に撮れます。逆にセンサーサイズが小さいと、イマイチ上手く写せないことも。少なくとも繊細な編集の技術がいるでしょう。
ともすれば真っ白に写ってしまうような難しい空も、フルサイズ機なら余裕。空の表情をそのまま切り取りたいなら、フルサイズを選ぶべきです。
夜でもけっこう写せる
雪中キャンプでの焚き火写真。これ、周囲は本当に真っ暗です。スマホじゃもちろん写りませんし、多分APS-Cやフォーサーズでも厳しかったでしょう。少なくとも雪の印影は上手く写らなかったと思います。
夜の雰囲気ある写真を撮れるのも、フルサイズならでは。好きなシチュエーションで好きな写真を撮るには、センサーはデカい方が良いです。
ちなみに夜間撮影できるスマホも出てきていますが、写真の楽しさという点ではまだまだです。たしかに写りますが、ズームして画角を調整したり、あとでRAWから編集したりといった、写真本来の魅力はまだまだ満たせないなと。
あとは自分の腕次第だ、と思える
僕がフォーサーズ機を使っていたとき、「もしフルサイズだったらもっと上手く撮れたのか?」なんて、機材のせいにしてしまうこともありました。それは半分正解であり、半分は間違い。もちろん純粋な技術による部分も大きかったと、今なら言えます。
しかし、仮に僕がそのままフルサイズを買わずにフォーサーズしか使ったことがなければ、一生その呪縛から抜け出せなかったでしょう。いわゆる「フルサイズ病」です。
「フルサイズはいいな」「まあ、フルサイズならそのくらい綺麗に撮れるよね」と、自分の腕を置いておいて機材のせいにしてしまう。これは誰しもに必ずある感情だと思います。
そこから抜け出して、純粋に自分の撮影技術を認識して向上していくには、一度はフルサイズを持つしかない。僕はそう思います。
フルサイズには、デメリットもある
僕は一切後悔していません。でもフルサイズ機には、デメリットもあります。逆に言えば、ここまでご覧いただいたあなたが、このデメリットさえ「まあ何とかなるかな」と思えるなら、選ぶカメラはフルサイズ機一択だとも言えます。
純粋に高い
これは如何ともしがたいデメリットです。とても高いです。本体はもちろん、レンズもわけわからない価格です。カメラを知らない人からすれば「え?プロにでもなるの?」と思われるような価格。趣味の域を超えているとすら思います。
もうお調べだとは思いますが、本体は15万~30万円。レンズはピンキリですが、こだわり始めればキリがありません。
でも断言します。これまでお伝えしてきたように、他のセンサーサイズでは決して表現できない魅力が、”フルサイズ”にはあります。
純粋に重い
めっちゃ重いです。いつシャッターチャンスが来るか分からないので、カメラは常に右手で握っていたい。そうなると、右手の親指と人差し指の間の筋肉が発達するほど重いです。
例えば僕の使うNikon D750なら、本体重量が750g。だいたい標準レンズのNIKKOR 24mm-120mmを付けていて、それが710g程度。これだけで1.5kg程度。
つまり、軽いダンベル持って歩いてるのと変わりません。替えのレンズもバッグに入っているので、自衛隊の行軍さながらです。
とはいえ「一眼レフ」ではなく「ミラーレス」の機種を選べば、「重さ」はある程度クリアできます。そのあたりもカメラ選びの基準の一つにしてみて下さい。
威圧感がある
かわいいカメラ女子の持つレトロ風カメラと比べて、フルサイズ機はデカいです。それはもう、旅先で持っていたら「え?なに?」と思われるほど。バズーカレンズなんて付けようものなら、完全に「ちょっと観光とは目的が違う人だ」と思われてしまう可能性も。
でも、それはもう仕方ありません。むしろデカいカメラを持つことに誇りを持ち、普通の方々の観光にも配慮し、決して無理に割り込んだり邪魔はしない。そのようにマナーを守りつつ、人目を気にして自分を律しながら撮影することが、フルサイズ機持ちの生きざまとも言えます。
今、初心者におすすめのフルサイズ機
さて、それではせっかくですから、初心者が初めてのフルサイズ機として選ぶべき機種をいくつかご紹介しておきましょう。すでに目星がついている人はもちろんそれでOK。よくわからない方は参考にしてみて下さい。
Nikon D750
完全に贔屓目です。僕の買ったニコンのフルサイズ機。2014年発売と年数は経っており、後継機のD780も2020年に発売しているという状況。価格が下がって非常に入手しやすいというメリットがあります。
一眼レフのフルサイズ機としては超平均的なスペックで、普通に撮影するにはなんの不満もないカメラ。小三元の標準レンズ、24mm-120mmセットで15万円少々とコスパは最高。もし決めきれなければ、ぜひこちらを。
Sony α7Ⅲ
評判の良いSonyのミラーレス機。「もしミラーレスに買い替えるならSonyかな…」と考えるニコンユーザーも多いハズ。
このαⅢは、5段の手振れ補正、常用ISO51200と、要は暗いところにもとても強いカメラ。イコール手振れ写真や失敗写真を防止しやすいとも言えて、初心者にもとてもおすすめです。
Nikon Z7
ニコンのミラーレス機。ミラーレス市場には後乗りしたニコンですが、フルサイズ機であるZ7の評判は上々。人間・動物問わずの瞳AF機能が付いたり、4K動画性能にこだわっていたりと、これまで「風景写真に強い」と言われていたニコンがさらにオールマイティに寄ったような機種。
性能的にはおよそ最強。予算が許せば、ぜひZ7を。
フルサイズ機を持てば、きっと後悔しない
「フルサイズにすべきか……?」と悩んでいる場合、殆どの場合においてあなたに選択肢はありません。シンプルに、「フルサイズにすべき」です。
ご紹介してきたように、性能的な意味はもちろん、メンタル的な意味でもそうです。
「フルサイズにしておけば…」と後悔してしまうフルサイズ病は、一度フルサイズ機を持たなければ絶対に治りません。
「フルサイズにこだわる必要はないよ」は、使ったことのある人にしか言えないセリフなのです。
そんなわけで、ぜひ一度フルサイズ機を手にして、その魅力を体感してみて下さい。