「日の丸構図は、初心者っぽくてダサいからだめだ。」そんな風に言ってしまう人がいるようですが、そんなことはありません。
例えば日の丸構図の本質がわからなければ、写真のストーリー演出のコツには気づけないでしょう。被写体を少し端に寄せて空間を演出する素晴らしさだって、対比として日の丸構図がなければ誰にもわからなかったはずです。
僕が本当に初心者で何もわからずに撮っていたころ、「構図」という概念すら知らずに撮影していました。その頃にもう少しだけでも知識があれば、もっと楽しく撮影できていたし、上達できていたんじゃないかな、と思っています。そんな過去の自分に伝えたいような内容を、初心者の方向けに解説したいと思います。
日の丸構図の何が良くて、どんなシチュエーションで使うべきで、何がどう使いづらいのか?沢山の作例とともにお伝えしていきます。
日の丸構図とは
日の丸構図とは、要はど真ん中にドーンと主題を置く写真のこと。それ以外の何物でもありません。冒頭でも触れましたが、「いかにも初心者っぽい」と言われる構図。
でも…上の写真のリスとか、可愛くないですか?この子を端っこに追いやるなんて、なんてもったいない!
こんな風に、「主題を引き立たせたい」というパッションを感じたときに使うのが正解。たしかに何も考えずに真ん中に被写体を置いてしまうと、「いかにも初心者っぽい…」という写真になりがちなことは事実です。
主題を引き立たせるときに使いたい
このサンタの写真はおおげさですが、とにかく主題を引き立たせたいときに使うのが日の丸構図。
とにかく主題が目立ちます。これを見せたいんだ!自分は、写真によってこれを伝えたいんだ!というものを、とにかく真ん中に置く。それが日の丸構図。
超シンプルな手法ですね。
でも、ストーリーを描きづらい
写真は「ストーリー」を描くもの。例えば登場人物が何を思っているのか、その風景はどんな季節に、どんな思いで撮られたものなのか。見る人が想像を膨らませられるのが良い写真だと言われます。
たとえばこのうさぎ。もうすこし引いて左の方に寄せて撮っていれば、視線の先の右側の空間が生きたように思います。「このうさぎは何を見てるんだろう?」なんて、見た人の想像力が膨らむ写真にできたかもしれません。
例えばこれは、だらんとした猫の写真。もともと撮っていたのは右側の写真ですが、トリミングして日の丸構図にしてみたのが左側の写真。
左側は、シンプルに「猫」の写真です。真ん中にドーンと写っていて、たしかに猫の可愛さはわかりますが、「で?」って感じです。
対して右側の写真は、三分割法を意識して撮った元の写真。右の空間により「抜け感」が出て、なんとなく昼下がりにまどろんでいる様を表現できたのでは?と思います。「昼寝でもしてるのかな。さっきまで遊んでたのかな。」そんな風にちょっと想像力を引き立てられる写真ではないかなと。
このツリーの写真はお気に入りの一枚なのですが、その理由はドーンと立っているツリー…のすぐ傍でハグしているカップルのシルエット。
一瞬ツリーが主題と見せかけて、その実カップルがメイン。実は日の丸構図ではないという写真です。
「もしかしたら久々に会えたのかな?」「実は彼氏は東京に住んでて、これからもう快速エアポートにのって新千歳空港から帰っちゃうのかも。遠距離か…」なんて、いろんなストーリーが浮かんできます。
これはカップルのシルエットだけを切り取っても良く分からないし、ツリーだけでもよくわかりません。写真で「その空間」を表現することで、ストーリーが生まれているわけです。
つまり空間を表現するのは苦手だが、あるがまま見せられる
つまり日の丸構図は、空間を利用してストーリーを演出するのが苦手。逆に「とにかく被写体を引き立たせて、ありのまま見せられる」、そんな構図だと言えます。
使いどころを考えて使っていきたいですね。
もうだめだと言わせない!日の丸構図の良い作例
さて、「日の丸構図はストーリーを描きづらい」なんて偉そうに言ってしまいましたが、日の丸構図にだって素敵な写真はあります。もちろんもっと写真の上手い人なら、日の丸構図でもストーリーを感じさせる写真は撮れるでしょう。僕が未熟というだけの話でもあります。
そんな日の丸構図で、「こんな風に撮れば、もう初心者とは言われないぜ!」という作例をご紹介します。「自分の写真で何言ってんだ?」と思われそうですが、初心者のに方は「はーなるほどねー」と思っていただけると幸いです。
幻想的な夜のシチュエーション
例えばこんなイルミネーションスポット。夜は真っ暗ですので、こいつを端に寄せたところで空間には暗闇が広がるだけ。そんなときは、もう真ん中にドーンです。
例えば人が入ってるとか、背景がなにかあれば話は別ですが、それしか写すものが無くて、かつ「それを写したい」ならもう、日の丸構図です。
かわいいは正義。端になんて寄せたくない。
冒頭でもご紹介した、エゾリス。なんて愛らしい姿でしょうか。この子を端っこに写してストーリーを演出する?いやいや、それは意味がわからない。
この子がカメラ目線をしてくれるなら、そのままシャッターを切るのが正解。そんなシチュエーションだってあるはずです。
幸せな家族の大黒柱は、そりゃ真ん中だ
こんな写真も、日の丸構図の一種と言えるでしょう。たまたま撮れた楽しそうなご家族。主題はもちろん大黒柱のお父さん。前景としてコンクリートの堤防をいれて、澄み渡った空と海でサンドイッチしました。
家族で遊びにきたのでしょう。もしかしたらこの中には、海が初めての子もいるのかもしれませんね。歩きにくそうな弟の手をとってあげて、お兄ちゃんとしての意識が初めて芽生えた日かもしれません。
このように、主題が小さめで空間が広い場合は、十分にストーリー性が出てきます。日の丸構図で味のある写真を撮りたい場合は、「空間を広く使って、主題を小さめに写す」のがコツだという一つの例になったでしょうか。
青春は、いつもど真ん中だ
ポートレートだって、日の丸構図を使いたくなるときがあります。背景に青い空があるなら、それでもう十分。青春は、いつもど真ん中。
こんな風に上半身にグっと寄って撮っても、それはそれで良い感じに。もちろん端に寄せたり、全身写したり、もっとアップにして顔に寄ってもOK。でも日の丸構図なら、このくらいが良バランスではないでしょうか。
日の丸構図は、あなたの写真の先生だ
つまり、日の丸構図の写真でストーリーを語れるようになればスゴイということです。そうでなくとも、「あ、このシチュエーションは日の丸構図じゃだめだな」と考えられたら、もう初心者なんて卒業です。
日の丸構図は、写真の先生です。主題を引き立たせる大切さを教えてくれて、でも毎回同じではダメだよ、と被写体を端に寄せる大切さにも同時に気づかせてくれる。空間の有無で生まれるストーリーも、日の丸構図がなければ気づけなかったでしょう。
そんなステキな日の丸構図、ぜひ上手に使いこなしてみて下さい。
では、素敵なカメラライフを。